実況中継型司会者

古館伊知郎司会の『報道ステーション』が好調らしい。ネットでは不評の古館だが、視聴率の安定で社長賞を貰うなど、その評価は高いようだ。7月以降は視聴率が16〜17%というのだから、茶の間の人気も相当なものなのではないだろうか?「おいしいネタが溢れているだけ」との声もあるだろうが、同時刻のNHK『ニュース10』の数字を奪っての高視聴率なので、スタッフと司会の努力は大きいだろう。
本日、『報道ステーション』は、それぞれの政党の知名度が高い党員を集め、『ニュース23』は、それぞれの党首を招き、政策論争を展開(演出)した。古館は、アンチ自民党に繋がるような持って行き方で進行。筑紫は、中立の立場を強調したいのか、干渉を避けた感が強い。両番組の数字は時間帯が違うし、まだ出ていないので何とも言えないが、視聴した結果は『報道ステーション』の方が、コマが弱いのに、面白かった。
「報道が面白い」という感想は、本来は不要な概念だ。しかし、報道番組が溢れている以上は、重要なんじゃない?まあ、不安を煽って高視聴率をはじき出しているのも確かだが、外国のメディアから「日本の政治の質は凄く低い」なんて評価を受けているわけだから、各局が政治から派生する問題を、毎日のように取り上げて数字を稼いでいるのは当然だ。にも拘らず、小泉首相や他の権力者が出てきた際に、過剰に中立の立場を取ってしまうと、今までの仕事を否定することになると思わない?日々取り上げる問題を、直接言うことなんて滅多にできないんだからさ。「選挙間近だから」とか言って中立のスタイルを取ったら、普段は文句ばっかり言ってるんだから、黙るしかないぜ。司会の意味がない。
当初は、「実況解説みたいな喋り口調が嫌だ」とか「淡々と喋るだけで中身が無い」なんて言われていた古館だが、インタビューや対談形式の論争になると、他の司会者では考えられないほど、沸点が低い。すぐに、怒る・・・。久米宏も、ペンや指で相手を指して、度々、不快感を表明していたが、久米よりもわかりやすい怒り方だ。また、決め付け方も激しい。そして、謝り方は、久米以上に事務的だ。
だが、その分、手にしている情報の信憑性を疑わず、相手に迎合しない姿勢を貫き易い。多少突っ込まれても、無視&逆切れだ。ただ、僕はそっちの方が好きだ。多くの司会者のように、「アナタの立場も重々存じておりますとも」という姿勢を取れば、【馴れ合い対談】に終始する。現状の日本の政治家や、官僚のお偉いさん方は【馴れ合い対談】に対しては、プロ中のプロだ。ごまかし、はぐらかし、平気で嘘をつく。対談の最後には、お互いの事を軽く労ったりもする。談笑だね。彼らが正直になるのは、汚職で逮捕された時だけだ。もちろん、彼らは、すぐに白状して、気が付いたら復職してたりする・・・。
「我々が正しい」「我々こそが当っている」というスタイルを古館が取り続けられるならば、『報道ステーション』の未来は明るいだろう。正義感・熱意・使命感といったものが、古館劇場では易々と手に入るのだから。それに、古館伊知郎は日本屈指の語り手だからね。お笑いでもないのに、ワンマントークショーで大勢客を呼ぶ、ってのは相当な才能だよ。人を惹きつけるトークパターンが見えてるんだとしたら、視聴者はついつい古館劇場を覗いてしまうことだろう。
ただ、残念なことに、スポーツで数字を稼ぐテレ朝のやり方には抗えないんだよね。「慎吾ちゃん、どうでしたか?今日の試合は?」なんて話してる時の不自然で過剰な作り笑いは、悪いがキモイ・・・。「報道の枠使って、番宣なんてとんでもない!その上、素人に振らせるなんて、テレ朝は、なぁに考えてんだ!」って声を荒げるのが、アンタの仕事でしょうに。