監督のサポートは大きい

 最初から最後まで、マラソンを見れる人の気持ちがわからない。F1なんてもっとわからないけどね。確かに進んではいるんだろうけど、映し続けられる先頭グループを見続ける面白さがわからない。まだマラソンは、風景の変化が見れたりもするけど、F1はね…。「ブゥーン。ブゥゥゥーン。キュイイイーン!!!」って…。「現在77週目に入りました!」って…。うーん。いや、楽しいんでしょうね。きっと、何か感じ取れないだけなんでしょう。僕なんかでは。
 ただ、マラソン選手:高橋尚子が作り出すドラマが面白いんで、なんか見てしまう。今回の『東京国際女子マラソン』を放映するテレ朝が報道番組で組んだ特集では、苦労が絶えないであろう2年間だけにスポットを当てて、「ここ2年は怪我絶えない」などと近年の不調と怪我をアピールしていたが、高橋選手の怪我はシドニーオリンピック前でも頻発していた。
 もともとエリートなどではなく、マラソン出身ですらない高橋選手にいち早く目をつけたのは、終了してしまったが、TBSで放映されていた『ZONE』だ。驚異的なタイムを出したのもあったのだろうが、名伯楽の小出監督に憧れて、妄信的に感じてしまうほど彼の過酷なトレーニングに着いていく高橋選手の映像は、それだけで(いいか悪いかは置いておいて)感動を与えてくれた。もう、ひたすらに直向きで、極めて痛々しい…。マラソンは、正に身を削る過酷なスポーツだと伝えてくれた。
 「F1レースのドライバー達は、普通の人よりも老化が早い」と講師か教師に聞いた記憶があるが、確かに見た目からして、彼らのシワは深く刻まれ、肌も中年以降の張りを感じさせるようになって来る。マラソンランナーにそれを感じるのは僕だけだろうか?それとも、見た目彼らが年齢よりも老いて見えるのは、激しい外気に晒されているせいだろうか?昔の旭化成だかのCMで、マラソンランナーの息遣いとその視点からの風景が流れていたのがあったけど、ランナーの呼吸は軽いデンジャーゾーンの息遣いに感じる。僕は小児喘息だったけど、あそこまでの呼吸に至るのは、相当な苦痛だと感じてしまう(あくまで、病人的見解から)。
 なんか話が逸れて来たけど、高校生の勘弁して欲しいイベントで、堂々1位を飾るであろう「マラソン」は、絶対やりたくないスポーツの一つだ。そんなスポーツを続けている選手たちのドキュメントは、その過酷さだけで感動させてくれる。大会が近づく毎に心身共に疲弊して行き、終了してもケガをしたり、次へのピークをコントロールする為に厳しい練習が控えている。高橋尚子のドキュメントは、金メダル獲得前のモノですら、靭帯損傷そして転倒からの手首骨折などのケガが絶える事がなかった。ギブスを付けたまま練習を行い、大会が近くなるとケガに加えてストレスで追い詰められていく…。練習中にTVカメラが近づいてくるだけで、泣きそうになって練習にならず、慌てて監督がカメラを払う。あれで、メダル取れなかったら、なんか凄くマゾなだけだよなっ、て今さらながら思うほど、ボロボロになって行くアスリートの映像だった。
 見返りすら得られずケガだけ残った最近の高橋選手は、独立してマラソンを続ける道を選んだ。1位の座を取り戻したから、「成功だった」なんて言えるんだろうけど、不安材料と責任を膨大に抱え込んだのも事実だろうね。もし監督がいれば、「3ヶ所肉離れをしていますが」なんてコメントをしなくて済んだだろうね。【 高橋東京女子マラソン 】なんて言っていいほどのテレ朝の番宣と報道。さらに、番組や大会へのスポンサーの期待。もちろん、『チームQ』のスポンサーの責任者が、「CMに高橋を起用した事への疑問」なんて言葉や記事に晒されてるのも耳に届いているだろう。不本意な成績に終わったとしても、美談に持っていく用意をしなくてはならない状況…。もちろん、出場拒否は再起不能にされてしまう状況だっただろう。
 小出監督のせいにしないための独立らしいけど、もう少し人のせいにできる環境を作ったって、誰も責めはしないだろうにね。もし、途中で棄権するような事になっていたとしたら、逃げ出したくても、マスコミ各社に自己弁護のインタビューを求められ、それに応じさせられていたことだろう。スポンサーのイメージに関ってくる問題でもあるからさ。ホント、勝って良かったっていうか、「常人では成しえない何かを持っている」なんて大袈裟な解説の口にした言葉が、適切なのかもしれない。
 個人的には、「何言ってんだよ。高橋は、もうダメだよ。ケガだってしてるし」って小出監督に悪口言わせといて、35K地点辺りで「Qちゃん、いいよっ!頑張れっ!ナイスラン!」って沿道で小出監督が応援する姿を演出して欲しかった。そしたら、確実に僕は泣いたね。まあ、小出監督は、ずっと良い人キャラでしたけど。